「Leverage 」

久保田正幸


 国内では金融法案成立をめぐって与野党の相もかわらぬドタバタ劇、 国外に眼を転ずればドイツのコール政権の崩壊、 KOSOVO 内戦、 奇しくも時を同じくして理由の差こそあれ超大国のエリツィンとクリントン両大統領の Impeachment Issue という前代未聞の波瀾含みの政治状況に加えて、 先週は日本の円高問題などの経済的混迷にも拍車がますますかかった感がある。 しかも経済学者は円高ではなく、 むしろドル安だという。 これまで世界が共通して持っていたGreenback 神話がもしこれを契機に崩壊すれば、 Deflation Spiral から世界恐慌さえおこしかねないという。 何か嫌な予感がする。 先日も妻と世界大戦がおこらねばいいがと話しあった。
冷戦終結後ともかくも資本主義は勝ち残った。 しかしその勝ち残りには疑問符がつけられた。
今回の台風のようなドル安円高の動きの裏には平然と1.5兆U.Sドルを一時に売りあびせたHedge Funds がある。 本来あまり動きのない為替相場で一時に大量のドルが売られれば衝撃もそれだけ大きく、 当然ドルの Panic 売りが加速し、10分間で7円の円高が進行することも起こりうる。 Hedge Funds の急先峰であった LTCM 経営危機説がでたことでも明らかなようにHedge Funds 全体が Derivative 部門の Hitech Capital で大きな損失をこうむったことは確かであるが Emerging Market でこうむった損失額は不明である。 つまり Hedge Funds は一時的に100円近辺で買っていたドルを売り、 損失の償還にあてたといわれている。 今回の一連の通貨危機はタイのバーツに始まり、 マレーシア、 フィリピン、 インドネシア、 韓国そしてロシアへと波及した。 Mutual Funds の手法は"Leverage Theory"である。 つまり投資家から運用を委託された資金で債権を買い、 それを担保に銀行や生命保険会社から多額の融資をとりつけ、 更に大きく相場をはり、 更にそれを担保に多額の融資をとりつけるという具合である。 つまり彼等が運用できる資金はこの"Leverage Theory"で信じられない位の大きな資金に化ける。 しかしその論理には大きな落とし穴がある。 つまり Poker で絶対勝つためには、 勝っても負けてもその倍額の賭け金を赤か黒になり続ければ、 最後には絶対勝てるという昔からの gamble の常識と同じである。 確かに論理的にはその通りであるが、 誰もそれを実践して大儲した人はいない。いわば Mutual Funds の Leverage Theory も 同 様 で は な いかと思う。 つまりバーツやルピアで巨額の富を得たところで 適 当 に や め れ ば よ い の だが 、Leverage Theory で運用資金同様に投資家への利益償還額も莫大な額にふくらみ続けてしまった。 つまり Mutual Fundsは投資家達に利益を償還し続けなければ運用資金をひきあげられてしまい、 自分達の仕事がなくなってしまうことになる。そのため Mutual Funds は資金を運用し続け、 利益を出し続けることが義務づけられている。 そして利益さえ出し続ければ、 彼等も信じられない位の莫大な資金を運用できる。 Leverage Theory で確かに莫大な資金が運用できるようになったが、 同時に常に相場で勝ち続けなければならないという義務と責任も加速度的に大きくふくらんでしまった。 いわば投資家達は個人であったり、 生命保険会社であったりする。 いわば彼等投資家は諸刃の刃のこの Leverage Theory という鍵で Pandora の箱をあけてしまったのかもしれない。

 アメリカは自国の通貨である Greenback を発行し続け、 世界中に Greenback がだぶついていることは誰もが認める事実であり、 ある種 Greenback 神話がある。 現在でも世界で何か有事があれば、 ドルは買われる。 しかしながらこの神話は本当に大丈夫なのであろうか。 丁度1年半前のタイバーツの下落が Asian Ecomic Crises をひき起こしたように、 LTCM の経営危機説は Latin America 諸国へ飛び火した。 事は LTCM だけにとどまらないだけに、 問題は深刻である。つまり Mutual Funds 自事の経営手法が問われているのである。 CNN の Newsでもアメリカの銀行が既に Credit Crunch を始めたと報じている。 何も Credit Crunch は日本だけに届まらなくなっており、 ここでもしアメリカ経済の減速が急速に進めば、 それこそ世界大恐慌につながりかねない。 それがアメリカ当局の LTCM 救済情置を実にすばやくやった理由ではないだろうか。 アメリカの Baby Boomer 達は401Kと株式を老後の生活のため投資しているため、 もしニューヨークダウが下がれば大変である。 しかしながらこの LTCM 経営危機説は今まで流入し続けたアメリカへの資金の流れを根本的にみ直す動きがおきることは必定である。

 世界の政治的・経済的施策はアメリカいうところの民主主義と自由経済主義主導の資本主義により行われている事は疑いようのない事実である。 つまり私達には American Hegemonism かU.N Multilateralism か2つの Option しかない。 そして、 現在の所、 圧倒的に IMF 主導のAmerican Hegemonism が優勢である。 確かにアメリカいうところの自由経済主義的資本は主義理にかなった経済原則であると思う。 しかしこれは同時に富んだ国と貧しい国、 富む者と貧しい者の二極化を疑いもなくおし進めていく。 そしてこの Leverage Theory はこの流れを加速させる。 今まで結果が何十年という形でしか現れなかったが、 現在ではほんの数ヶ月で結果が出てしまう。 ある意味で極めて gamble 性が強くなっている。 そして又私達の欲望も加速度的に大きくなっていく。 このまま際限なく私達の欲望がふくらんでいくようなことがあれば、 その行きつく先は戦争ということにはならないであろうか。19世紀に始まったイデオロギー戦争は20世紀後半に 一 応 の か た が つ い た 。 し か し な が ら 勝 利 し た Democratism と Free MarketCapitalism も無傷のままでなかった。 おまけに私達が歩み出そうとする21世紀がどんな世紀になるのか誰一人として予測することはできない。 かつて大ピラミッドを作る際古代エジプト人はLeverage を使用したといわれる。今日私達は来世紀に向けてこの Leverage を用いてどのような夢を紡いでいけばよいのだろうか。 あるいは果たして夢を紡ぐことができるのであろうか。


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