こころと体
三宅孝弘
最近、目にしたものの中に、こころと体の関係を著したものが二編ある。一つは、日本医科大学リウマチ科の吉野槙一氏らによる、「楽しい笑いと慢性関節リウマチ患者」という論文であり、もう一つは、山梨医科大学精神神経科の神庭重信氏による「こころと体の対話、精神免疫学の世界」という著書である。
洋の東西を問わず、昔から「心と体」、「心と病」は密接に関連していることは、ヒポクラテスに代表される古代医学の「自然治癒力」という医学思想に見るまでもなく、よく知られているところである。
吉野氏らは、林家木久蔵師匠の「お笑い」を用いて、3回にわたる楽しい笑いの実験により、リウマチ患者と健常者の二群について、落語鑑賞前後の被験者の気分、疼痛度、内分泌系、免疫系などの検討をおこない、楽しい笑いは乱れている神経−内分泌−免疫系のネットワークを正すことが示唆されたと結んでいる。
また、神庭氏はその著書の中で、こころと体の関係を、脳と免疫系を中心とした生体防御機構に焦点をあてて研究する学問を「精神免疫学」と定義した上で、最近の脳科学の発展およびその知見として、脳と免疫系とはネットワークを形成しており相互に情報をやり取りしていること、また、免疫系の関与する疾患、たとえば感染症、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患、花粉症や喘息などのアレルギー疾患、さらには、がんの発症や治療の予後にすら、ストレスに対する個人のとらえ方や感じ方(これを情動認知スタイルという)が無視できない影響をもつことなどを述べている。
この、吉野氏および神庭氏の著書から学ぶことは、「こころを癒す」ことの治療学的意味であり、それは心身相関の医学からすれば、「体を癒す」ことにもつながってくるということであろう。日常、「心」して診療にあたりたいものである。
