2 BCGワクチンについて
BCGワクチンは,パスツール研究所(フランス)のカルメットとゲランによって開発されたものです。ウシ型結核菌を13年間230代継代培養したことにより弱毒化に成功しました。わが国へは,1924年パスツール研究所から分与され,1938年に日本学術振興会に小委員会が結成されて研究が進められ,BCGの効果が確認されました。現在では,結核予防法に基づいて,全国的に予防接種が実施されております。
接種方法は,初めの皮下接種から局所反応軽減のために皮内接種になり,さらに1968年からはより軽い局所反応ですみ皮内法と同等の接種効果がある経皮接種(管針法)になりました。
また,当初の液体ワクチンから,1950年以降は長期保存可能(現在は2年)な乾燥ワクチンにかわっています。そして,1965年には日本株(Tokyo172strain)からつくられた乾燥BCGワクチンがWHOの国際標準品に指定されました。
3 ワクチン接種の実際
1)接種の時期
定期接種としては,@4歳に達するまで,A小学校1年生,B中学校1年生,それぞれのツベルクリン反応陰性者に接種します。ただし,乳幼児の初回接種の際は,初めてのツ反が30mm未満の陽性の場合は,ツ反を再検査し陰性であったら,BCGを接種します。
また,A,BでBCGを接種した場合は,翌年(2年生)ツ反をし,陰性ならBCGを接種します。
2)接種の方法
9本の針が植え付けられている「管針」を用いて経皮接種します。BCGワクチンを溶剤(日局生理食塩液)で懸濁(とか)し,懸濁液をスポイトで接種部位の皮膚に滴下し,管針のツバで塗り広げ,管針で強く2回(2カ所)押して,接種します。
3)接種不適当者
BCGワクチンを接種する際には,事前に必ずツベルクリン反応検査をして,ツベルクリン反応陰性者に対してのみ接種いたします。
ツベルクリン反応検査は次に掲げる人に対して行いません。@明らかな発熱を呈している者,A重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者,Bまん延性の皮膚病にかかっている者,Cツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう,壊死等の強い反応を示したことのある者。D副腎皮質ホルモン剤を使用している者。また,麻しんや風しんなどにかかった後や,麻しんワクチン接種後1カ月間は,ツベルクリン反応が減弱または陰性化することがあるので注意を要します。
BCG接種は,上記@,Aのほか,B結核その他の疾病の予防接種,外傷等によるケロイドの認められる者、Cその他,医師が予防接種を行うことが不適当と認めた者に対しては行いません。また,免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者,エイズ感染者にも,BCGを接種しません。
4)接種部位の変化
接種後1ヶ月以内に針痕に相当し発赤,硬結,次いで腹痛,痂皮を生じますが,いずれも通常の局所の経過であって,2〜3ヶ月で小さな瘢痕になります。まれに腋窩リンパ節に軽度の腫脹を起こすこともありますが,通常は2〜3ヶ月で自然に消退します。
5)取り扱い上の注意
(1)アンプル内のBCGワクチンの乾燥状態を確認し,吸湿してアンプル内壁に固着しているものは使用しないで下さい。
(2)溶剤を一度に注入すると,ワクチンが懸濁せずに残って不均等になることがありますので,初めに約半分を入れワクチンを湿らせてから,残量を加えます。
(3)懸濁したワクチンは,光や熱に影響を受け死滅しやすいので注意が必要です。一度懸濁したら使い切ってください。
(4)集団壊種用の管針,煮沸消奉または高圧蒸気滅菌をして下さい。乾燥滅菌は絶対にしないで下さい。
(5)管針は被接種者ごとにかえなければなりません。
Q1 BCGワクチンの有効性について教えて下さい
A ツベルクリン反応陰性の幼児に管針法でBCGワクチンを添付文書どおり強く接種し,1年後にツベルクリン反応をみますと,80%以上の陽性率が得られます。
また,接種効果の持続期間については,正しい接種がなされた場合,発病予防効果は10年以上続くといわれています。
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,23.1991
森 亨:ワクチン再前線,237,1989
中島丈夫・吉日直之:日本医事新報、3360,136,1988
Q2 BCGを接種してからどのくらいの期間が過ぎれば、効力が出て来るのでしょうか
A
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,80.1991
Q3 BCGの効果は,どのくらいの期間続くのでしょうか。乳幼児期に1回接種しただけで、小学校1年生まで接種の機会がなくても大丈夫でしょうか。
A
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,80.1991
森 亨:ワクチン最前線,237.1989
中島丈夫・吉田直之:日本医事新報,3360,136,1988
Q4 BCG接種部位に針痕がみられない場合,接種効果はありますか。また針痕はいくつくらいあればよいでしょうか。
A
針痕がない場合は,できれば3カ月後にツベルクリン反応検査をし,結果が陰性ならば再接種することが望ましいです。
森 亨:ワクチン最前線,246,1989
Q5 乳幼児期にBCG接種をしているのに,小学校1年生でツベルクリン反応検査をしますと、約半数が陰性になっているのはどうしてでしょうか。
A
BCG接種後のツベルクリン反応陽性の持続期間についてはかなり個人差が大きく,長い場合には10年以上も強陽性が続き,短い場合は2〜3年で陰性になってしまうこともあります。しかし,後者の場合でも,BCGの効果は弱くなっても完全になくなってしまっていないと考えられています。
戸井田一郎:ツベルクリンの話,80,1991
徳地溝六:BCG接種−その理論と実際,36,1987
中島丈夫・青田直之:日本医事新報.3360,136,1988
Q6 ツベルクリン反応の「ブースター効果(追加免疫効果)」とはどういうことでしょうか。
A
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,80.1991
Q7 ツベルクリン反応検査にも禁忌事項があるようですが,それはどのようなものでしょうか。
A
ただ,正しい結果が得られないおそれがあり検査をする意味が疑問であったり,結果の解釈に慎重を要するというような,「相対的な禁忌」はあります。
主なものは、ウイルス性疾患に罹っているときやその治癒直後,ウイルス生ワクチンの接種後1カ月くらいの間、副腎皮質ホルモン剤使用中(軟膏の局所的な塗布を除く)などです。これらの場合は,ツベルクリン反応は正しい値より弱く出たり,陰性になったりします。その他特別な場合として,血液透析中,免疫抑制剤や抗癌剤使用中・照射療法中,サルコイドーシス、リンパ腫,AIDSなどでもツベルクリン反応は弱くしか出ません。
また、何回やってもツベルクリン反応が強く出ることが確実な人には,いまさら検査をする必要はありませんし、過去に水ほう・壊死等の非常に強い反応を示した人に対してはツベルクリン反応検査をしません。
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,95,1991
森 亨:ツベルクリン反応,64,1989
Q8 BCG接種後の潰瘍の手当は、どうすればよいでしょうか。
A
一つ一つの膿疱が融合して全体に大きい膿疱になったり,局所を引っ掻いて他の細菌の混合感染を起こしたりした場合は、1%リファンピシン軟膏を局所に塗布したり抗生物質入り軟膏で混合感染を治療することもありますが,このような場合はごく少数です。
森 手:ワクチン最前線、245、1989
Q9 BCG接種後、腋窩リンパ節の腫脹がみられたときは,どう対処したらよいでしょうか。
A
リンパ節の大きさは時とともに変化し,またきわめてまれに瘻孔(組織が欠損して管状の穴ができること)を形成した例がありますので,経過観察は必要です。リンパ節が化膿して波動を触れるか,皮膚との癒着,瘻孔の形成,あるいは3cmを越えるほど大きくなれば,1%リファンピシン軟膏を局所に塗布するか,あるいはイソニアジド(INH)投与などの治療が必要になりますが,原則として外科手術は必要ありません。
日本結核病学会予防委員会:結核,62,361,1987
森 亨他:日本医事新報,3288.45.1987
Q10 第1回日のBCGワクチンの接種は何歳までに行えばよいでしょうか
A
4歳をすぎると公費負担は受けられませんが,幼児が社会生活に入る前に接種をすませておくという観点から,4歳をすぎた場合でもできるだけ早い時期にBCG接種をしておいた方がよいでしょう。
森 亨:小児科,37,1141,1996
横田清司:小児科臨床、49、651、1996
Q11 副腎皮質ホルモン剤を使っていますが.BCGワクチンの接種を行ってもよいでしょうか
A
なお,ツベルクリン反応については,反応が弱くなって陽性者が陰性とでることがありますので,これらの薬剤の使用中は行わないでください。
木村三生夫他:予防接種の手びき 第7版,42,1997
早川 浩:日本医事新報.3664,142,1994
Q12 4歳末満の乳幼児の陽性(29mm以下)例に対する再度のツベルクリン反応検査が行われておりますが,初回検査での陽性者が,再度のツベルクリン反応では陰性になった場合 これを真の陰性者として扱ってよいでしょうか
A
なお,このような偽の陽性が生じる理由として,手技判定の不慣れ(皮下出血斑や針刺激痕の誤読),非特異性反応の一過性の出現などが考えられますが,まだ確かなことはわかっていません。
森 亨:ツベルクリン反応検査,87.1995
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,59、1991
Q13 4歳末満の再度のツベルクリン反応は−初回のツベルクリン反応判読後2カ月以内に行うことが望ましいのはなぜでしょうか。
A
戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,54,1991
Q14 BCG接種歴がなくツベルクリン反応が自然陽転したのですが,どのような生活指導をすればよいでしょうか。
A
INH服用中でも,日常生活や学枚生活はさしつかえないでしょう。ただし,特別の激しい運動や長時間の日光浴、例えば、運動部などの合宿訓練などは避けます。正規の授業で行うプールでの水泳などは許可してもよいでしょう。
日本結核病学会予防委員会:結核,61,55,1986